初め、京次ですら、雪之絵真紀の冗談かと思った。 しかし、その表情を見るに本気である。
鳳仙圭はというと、テレビ画面を通して見ても、血の気が引いているのが解った。 隣にいるアケミなら尚更で、操られている状況でなければ、声を上げて笑っている所だ。
「...冗談キツイな。 鳳仙圭だよ。 覚えているはずだよ? あんな事があったんだからさ。」
その名前を聞いて、ようやく雪之絵真紀が顔を綻ばせた。
『あー、お前がそうなの? 知ってるわ。現在の鳳仙家頭首でしょ?...でも、あんな事って何だったかしら? 過去のお前と私の間に、特別な事があったのかしら?』
「真紀姉さん、忘れているはずがないだろう? 姉さんの別荘の地下室での事、忘れたとは言わせないよ?」
何とか平静を保とうとしている、その口調。 しかし、こめかみには、京次以上の血管が浮いていた。
『...全然覚えてないわね。 その口振りだと、地下室で再起不能にした男達の中の一人かしら?』
画面の中で、鳳仙圭が目の色を変えて歯ぎしりしているのが解る。 更には、癲癇かと思える程、その体は震えていた。
『雪之絵、お前、地下室で何やってたんだよ。』
『別に? 言っとくけど、私が経験した男は京次だけだからね?』
『はいはい...』
『本当だからね? こんな事で嘘つく女じゃない事ぐらい知ってるでしょう?』
『だから、知ってるって。』
まるで、恋人であるかのような二人の会話が、テレビから聞こえてくる。
今回ばかりは、雪之絵真紀の顔色も変わった。
『...てめえ、』
今までになく、鋭い視線を向ける京次だが、画面の向こうからみれば、檻の中のライオンでしかない。
京次の怒りが膨れ上がる程、鳳仙圭は余裕を取り戻した。
「真紀姉さんが捨てるだけあって、とんだ出来損ないだ。 この娘も、生まれてきたのを後悔してるんじゃないかな?」
辛うじて繋ぎ止めていた意識の中、デレビに映し出されている京次と、