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クレイモア

屑男 撲滅抹殺委員会!

−前に歩く−

「前々から、思っていた事では、あるのだけれど、」

「結局ね、アケミは自分ごと雪之絵と鳳仙の連中を破滅させようとしている。」

「だから、アンタに手を貸す方がアケミの為になると思って...」

 珍しく、サラの言葉に切れがない。

 アケミを救う為に、皆月京次に加戦する。 そう考えていたサラだったが、ここに来て気が付いたのである。

 京次にとって、アケミは娘の命を狙う敵なのだ。 京次がアケミを助ける義理はどこにも無い。

「それ、何でアケミに言わなかったんだ?」

「これで本当にアケミを救えるのか、私には自信がない。」

 上目遣いで、本当に自信なげに見つめるサラを放っておいて、京次はわざとらしく腕組みして考え込む。

 そして、まったく表情を変える事なく、組んでいた腕を解き、手招きして見せた。

「?」

 良く分からないと言った顔をしながらも、何の警戒心も持たずに側に寄って来たサラを、ヒョイと持ち上げて膝の上に乗せる。

 驚いたサラの両目が、京次を見上げる。

「日本にはな、名言があるぞ?」

「...何?」 サラの言葉が上ずっている、褐色の肌ながら上気して赤くなれば解るものだ。

「勝てば官軍。」

「は?」

「つまり、俺がアケミを助けられれば、サラは正しかったって事だろ?」

「だったら自信を持て、サラお前は正しい。」

くすっ、

「でも、大丈夫なの? ミコトだけで手一杯なんてことはない?」

「大丈夫さ、命を守るもアケミを救うも、結局雪之絵家と鳳仙家つぶせばいいんだろ? やる事は一緒さ。」

「成る程、それは確かに。」

 何時もの調子に戻ったのも束の間、サラが再び静かになる。

「ミコトか...」

「ん?命がどうかしたか?」

「皆月京次、ミコトは娘だから大切なのよね?」

「まあ、その通りだ。」

「でも、ミコトも好きな男とかつくって、何時かは、お別れする時が来るんじゃない?」

「まーな、考えたくも無いが、その通りだろうな、」

「その時が来たら、寂しい?」

「まーな、」 きっと、寂しいなんて言葉では全然足りない。

「そうか、それじゃあさ、」

「その時が来たら、ミコトの代わりに、私がアンタの娘になってやるよ。」

 京次の顔が、思わずほころぶ。

 今のは、きっとサラ自身の望み。 それを、京次を想っての提案のように言っている所がサラらしい。

 しかし、ある種の覚悟を決めている京次は、それを素直に受け入れる事が出来なかった。

「...その頃は、サラも誰か好きな男出来てるんじゃないか?」

「それは無い、私はそれを望んでいないから。 それより、もう一つ言っておきたい事あるんだけど、いい?」

「何だ?」

「私と病院の屋上で戦ったの、覚えてる?」

 京次が肯く為に頭を下げると、サラは、その下がった頭を抱えるように腕を回し、引き付ける。

 それでも、とどかないので背も伸ばす。

「日本の親子はキスとかしない。」

「命は、したって自慢気に言ってたけど?」

「うっ、」

「そんな事より、」

 サラの唇が、申し訳程度に京次の唇に重なる。

「私はあの時、アンタに負けて良かった。」

クレイモア ひひひひひ

屑男 撲滅抹殺委員会!

−前に歩く−しししししし

IN序章     しし


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