「だから、アンタに手を貸す方がアケミの為になると思って...」
珍しく、サラの言葉に切れがない。
アケミを救う為に、皆月京次に加戦する。 そう考えていたサラだったが、ここに来て気が付いたのである。
京次にとって、アケミは娘の命を狙う敵なのだ。 京次がアケミを助ける義理はどこにも無い。
「それ、何でアケミに言わなかったんだ?」
「これで本当にアケミを救えるのか、私には自信がない。」
上目遣いで、本当に自信なげに見つめるサラを放っておいて、京次はわざとらしく腕組みして考え込む。
そして、まったく表情を変える事なく、組んでいた腕を解き、手招きして見せた。
「?」
良く分からないと言った顔をしながらも、何の警戒心も持たずに側に寄って来たサラを、ヒョイと持ち上げて膝の上に乗せる。
驚いたサラの両目が、京次を見上げる。
「日本にはな、名言があるぞ?」
「...何?」 サラの言葉が上ずっている、褐色の肌ながら上気して赤くなれば解るものだ。
「勝てば官軍。」
「は?」
「つまり、俺がアケミを助けられれば、サラは正しかったって事だろ?」
「でも、大丈夫なの? ミコトだけで手一杯なんてことはない?」
「大丈夫さ、命を守るもアケミを救うも、結局雪之絵家と鳳仙家つぶせばいいんだろ? やる事は一緒さ。」
「成る程、それは確かに。」
何時もの調子に戻ったのも束の間、サラが再び静かになる。
「ミコトか...」
「ん?命がどうかしたか?」
「皆月京次、ミコトは娘だから大切なのよね?」
「まあ、その通りだ。」
「でも、ミコトも好きな男とかつくって、何時かは、お別れする時が来るんじゃない?」
「まーな、考えたくも無いが、その通りだろうな、」
「その時が来たら、寂しい?」
「まーな、」 きっと、寂しいなんて言葉では全然足りない。
「そうか、それじゃあさ、」
京次の顔が、思わずほころぶ。
今のは、きっとサラ自身の望み。 それを、京次を想っての提案のように言っている所がサラらしい。
しかし、ある種の覚悟を決めている京次は、それを素直に受け入れる事が出来なかった。
「...その頃は、サラも誰か好きな男出来てるんじゃないか?」
「それは無い、私はそれを望んでいないから。 それより、もう一つ言っておきたい事あるんだけど、いい?」
「何だ?」
「私と病院の屋上で戦ったの、覚えてる?」
京次が肯く為に頭を下げると、サラは、その下がった頭を抱えるように腕を回し、引き付ける。
それでも、とどかないので背も伸ばす。
「日本の親子はキスとかしない。」
「命は、したって自慢気に言ってたけど?」
「うっ、」
「そんな事より、」
クレイモア ひひひひひ
屑男 撲滅抹殺委員会!
−前に歩く−しししししし
IN序章 終しし