「あ?」
「目、覚めた?」
うっすら目蓋を開けて見ると、目の前にはアケミの顔があった。
「あの、私?」
霞掛かった思考のまま、自分の体に視線を泳がすと、まだ裸のままだった。
それはアケミも同じ事で、カズ子にアケミの肢体が絡み付いているような状態だった。
やっと今まで何をしていたのか思い出したカズ子は、途端に焦りだして涙目をアケミに向ける。
「私、アケミさんとしたんですよね?」
世間一般で言う性行為とは、あまりにかけ離れているのだが、アケミは特に考えるでもなく答えた。
「そうね。 感想は?」
「...想像してたのと随分違いました。」
「嫌だった?」
苦笑しながら聞いたアケミに対し、カズ子は幾分真面目な表情で見つめ返す。
「アケミさんは? 楽しんでくれましたか?」
「...そうね、とても楽しかったわ。」
これも考えなしに答えた言葉だったが、カズ子には相当重要な答えだったらしく、聞いた途端に満面の笑みを浮かべた。
「だったら、私が嫌なはずはありません...あ、あい、愛する人に喜んでもらえたら、私、本望ですから...」
そう言ったカズ子は、熟したトマトほどに顔を真っ赤に染めて視線をそらした。
いろんな男に抱かれて来たアケミは、心身共に女として完成されている。 アケミのカズ子を見る目は、永久に”妹”から変わらないだろう。
「私、アケミさんのしたい事なら、喜んでしますから。」
自分の言葉に酔い始めたカズ子が、潤んだ瞳でアケミに訴えかける。
「私、アケミさんの子供が欲しいです。」
「...無理だって。」
「でも、欲しいです。」
「私と京ちゃんの間に、子供出来ても上げないわよ?」
「アケミさんの口から、男の名前なんか聞きたくありません!」
何はともあれ、辛うじてノーマルだったカズ子を、レズにしてしまったのは、間違いなさそうだ。
「私、お風呂の用意してくるわ。」
頭痛を感じて、こめかみを押さえるアケミが立ち上がろうとした所、カズ子がガッチリ抱きしめた。
「お風呂なんていいです。 このままずっと抱き合っていたいです。」
「でも、二人とも汗かいてるし。 それに...」
『それに、私は桐子のお尻を舐めている。』そう言おうとした時、カズ子がアケミの口に吸い付いた。
はじめのキスと同じく、ディープキスだ。
「駄目よ、汚いでしょう!?」 無理矢理カズ子を引き剥がす。
「アケミさんは、何があっても汚くないです。」 キッと睨み付けて、負けじと言い返す。
「......」
今日の所は、カズ子に勝てそうにない。
今から京次の所へ行って、カズ子で”実験”した行為を試してみたかったのだが、どうも無理そうだ。 アケミを捕まえたカズ子の腕は、暫く外れる事はないだろう。
諦めたアケミが、自分もカズ子を抱きしめた。
確かに柔らかいカズ子を抱くのは気持ち良いが、やっぱり京次の強靭な肉体に寄り添う方が、アケミの好みである。
「アケミさん、」
「なあに?」