ドンドンッと、乱暴に扉を叩く音が聞こえてきた。
「雪之絵 命を捕らえたわよ?」
扉の向こうで騒いでいるのはアケミだ。 用件は本人も言っているように、雪之絵命を捕らえた事を報告に来たのだろう。
「ああ、今は少し手が塞がっていてね、後から行くから、二階の一番奥の部屋にでも連れて行ってくれ。」
暗い部屋の中、壁を背にして座り込んでいる鳳仙圭が言った。 部屋の様子はアケミの部屋にも負けないくらい質素だ。 四面、黒光りする壁だけで、本当に何も無い。
「...雪之絵真紀が来るはずだわ。グズグズしている暇は無いわよ?」
イラついたアケミの言葉に、クスクスと笑いながら、静かに答えを返す。
「それは、俺の望んでいる事だよ。 雪之絵の叔父さんにも伝えておいてくれ。」
「......」
アケミは納得したのか、扉の前から離れる気配がした。 キッ、キッ、と床を踏み歩く音がだんだんと遠くなっていく。
「桐子と、何年兄妹をしていると思ってるんだい?」