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屑男 撲滅委員会!

−ブラック・アイズ−

 カズ子とアケミの住んでいる鳳仙家屋敷は、見た目も造りも木材を最大限利用した古い日本家屋である。

  また、屋敷を囲む塀の一周を、マラソンコースに入れるランナーがいる程の広い敷地面積を持ち。 屋敷を、神社かお寺と見紛える落ち着いた佇まいを見せている。

 現在生きておられるお年寄りの、またその祖父の代から、その場所に建っていた、由緒正しい鳳仙家の屋敷。

 まさか、そんな場所の地下で、一人の女性が鳳仙家の発展の為に、日々、財界の実力者に汚されているなどと、一体誰が想像出来ると言うのだろう。

 ぺちゃ、ぺちゃ、ぐちゅ、ちゅ、

 鳳仙家に対し、金銭的な援助を行う財界の権力者。 それが陸刀アケミの『接待』の相手だ。

 これは昨日今日の話ではない。 アケミが諸事情により、五年前に陸刀家の実権を握ってから今まで、呪術に操られ否応なしにやらされて来た行為である。

 

 鳳仙家の地下室は二つあり、一つは今アケミが責められている『接待室』。 これは、ラブホテルの部屋を思い浮かべてもらえば分かりやすい。

 何分、財界の実力者を接待する場所なので、失礼のない程度の飾り付けはされているのだ。 又、部屋の中からご足労なくする為に、トイレやシャワーも据え付けられていた。

 一方の、その隣にあるコンクリートむき出しの部屋は、過去に拷問部屋として使われていたのだが、そういった器材も全て『接待室』に持っていかれているので、今は単なる休憩場所でしかない。

 『接待』の時間が、後、残り僅かである事を知らせに来たカズ子が今いるのも、その兄の『鳳仙 圭』(ほうせん けい)が壁にもたれて座っているのも、その休憩部屋の方である。

「桐子、足はもう良いのかい?」

「おかげさまで。」

 カズ子の兄である圭が、さほど気にしていなさそうに口にした問いかけに、あからさまに嫌味で答えるカズ子。

 実際、兄の圭の言葉は社交辞令に過ぎない。 カズ子が、その呪術を持って、怪我の治癒を早める事が出来るのは、鳳仙家の人間ならば誰でも知っている事実である。

 そう、

 全治三ヶ月と診断された、サラメロウにへし折られた右足は、たった十日たらずで歩けるまでに回復していた。

 瞬間的に怪我を治せる訳ではないので、戦闘中に役立ちはしないが、まれに、『接待』でアケミが怪我をするので、カズ子には大切な能力の一つなのだ。

「アケミさんの接待の相手は、いつも二人なんですね。」

 大体、三日に一度のアケミの接待は、一組で終わる日はない。 今日にしても、これが最後の五組目だ。

 カズ子自身、あさはかな考えとは思ったが、一回の接待に、大勢の人間を当てれば、時間そのものは早く終わると思ったのだ。

「まあ、せめて三人だろうなぁ...」

 人を馬鹿にした様な笑いの中に、紛れた、鳳仙 圭の言葉。

「女の体は、使える”穴”が三つしかないからな。」

 それを聞いたカズ子は、怒りを我慢する為に、血が出る程、歯を噛み締めた。

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−ブラック・アイズ−

第四話、「アケミの独白」 後編、


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