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屑男 撲滅委員会!

−ブラック・アイズ−

 夕闇が秒単位で深まる中、ある林の一個所だけが時間に取り残されたかのように、朱に染まっていた。

 もっとも、普通の人間がそれを見ても解らない。 京次やサラメロウの様な、ごく一部の人間だけがそう感じるだけだ。

 その朱の正体は、サラメロウも逃げ出した雪之絵真紀の炎の殺気である。

「...でも、一人だけ、雪之絵とまともに戦えるヤツが居るみたいだな。」

 朱色に染まる林を眺めながら、京次が呟く。 たしかに。陸刀のヒットマンの中に、たった一人だけ雪之絵と勝負出来る戦士がいた。

 その正体は実は陸刀アケミなのだが、その事を京次は知らない。

 サラメロウも、京次と同じ気配を感じ取りながら、雪之絵と、陸刀ヒットマンの戦いを探っている。

 こちらは京次と違い、表情が険しい。

 一々、京次の言う通りで、雪之絵真紀に対抗できるのは、陸刀アケミただ一人だけだ。

しかも、それすらも時間の問題と思えた。


「どうやらアンタの言う通りみたいね。まあ、私がミコトを連れ去るまで持ってくれればいいんだけど...

ミコトはどこ?言えば殺さないであげるけど?」

「ここには絶対来ないよ。 自分で探せるなら探すしかないな。」

『こっちに、もう一つ屋上があります!!僕が人目に付かず稽古するのに使った場所です!!』

 『そうかなーっ、私やっばり、トイレの個室とかを探した方が良いと思うんだけどなあ!』

『パパの事だからさーっ!!引っかけた看護婦さんと、乳繰り合ってると思うんだーっ!!』

『なるほど!!それは有り得ますね!!』

「なんせ、種族維持の本能で生きてる人ですから!!」

「あっ!!パパいたーーっ!!」

「パパー!!良かったぁー!!心配したよーっっ!!」

「一体、何に対して、心配してたんだよ。」

 京次の名誉の為に述べておくが、京次が経験した女の数は、たった三人だけである。 高森にまで言われる程ではない。

「...まったく、緊迫感のない連中よね。」

 京次の後ろから聞こえたその声に、命が直ちに反応する。

「ミコト、こんばんは。」

「待て、落ち着け命。」

「だって...」 少しだけ力の抜けた命が、京次を見上げた。

 それと同時に京次の方も、命を押さえる腕の力を抜く。 しかし、これが失敗だった。

「ミコト?今日は、ちゃんとオムツ付けて来た?」

「...何を?」

「だって、ミコトってば、人前でお洩らししちゃう程、お子様なんですもの。」

 瞬間、命の体が京次の腕からすり抜けた。


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