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これから戦わなくてはならない敵の刺客二人を見ながら、命は少しだけ顔をしかめた。
「なんか、両方とも生理的に受け付けない相手だわ。」
「そうね、まあ同感だわ。」
脂肪でたるんだ体を持て余して、息を荒げる大男に、等身を間違えたかの様な、足の短い小男。
その体格が、彼らの戦闘スタイルに通じるものだと言っても、やはり思春期真っ只中の命と、その命に毒されつつあるサラに取っては、ただの格好悪い男でしかない。
「早い所、始末しちゃおう? 近所が騒ぎ出す前に。」
「それも同感だわ。」
皆月家は、近所で騒がしいと有名な家族なので、ある程度暴れても、『皆月さん家、また修羅場ですわ。』 と思われるだけですむはずだ。
今だに、水と油の関係である命とサラが、お互いの思惑を確認し合っていると、足の短い小男が、ゆらりと体をゆらして前に出た。
「無駄口は、もう終わりにしてくれないか?」
小男の顔には、見るからに卑らしい笑みが浮かんでいる。 命はそれを見て、居間でこの男がサラの体を弄っていたのを思い出した。
「サラ? このチビは、アンタが好きにしなよ。」
命り言葉に、サラの頬が思わず緩む。
「そう? それは素直に感謝するわ。」
命とサラのやり取りを聞いていた小男が、怒声とともに攻撃に転じようと身構えた。
仮にも、鳳仙家に金で雇われた本物の殺し屋である。 万人から外れた戦闘能力を持っているのは当然であろう。
小男の力は、その小柄な体が示す通り、小回りの効いたスピードであった。 過去に近いタイプとして、陸刀家ヒットマンの太郎がいたが、彼などは足元にも及ばない加速力を持っていた。
ドサッ
「あー、私のサイン。 そのうち値打ちが出るから。」
待ってましたとばかりに、そんな事をのたまう命。 満面の笑みから察するに、彼女は本気らしい。
「ミコト! お前、ヘボ親父が出かけた後、やけに静かだと思ったら、こんなもの描いてたのか!!」
「なんでよーっ、そこらへんのシンナーじゃ、絶対消えないインク使ってるからいいでしょ!?」