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サラが部屋の角で、食べ物を取られないように口の中に詰め込んでいる。 その様は、まるで犬だ。
「まぁ、今から出掛ける事だし、お土産買って帰ってやるよ。」
言いながら、京次が立ち上がる。
「パパ、買い物行くなら、私も付いて行こうか?」
「あ、いや、俺自身の用事があるからな。 今回は俺一人で行って来よう。」
そう言いながら、京次がサラに視線を向けると、既にサラは、青いマントをはおり、義手と義足を取り外していた。
京次が出かける場合、サラはこの状態で京次の帰りを待たなくてはならない。 それが、このアパートに居る為の約束である。
「私とパパとサラと、三人でお出かけすればいいんじゃない?」
うつむき加減で、命がそんな事を言い出した。
「すまんな。本当に、大事な用事があるんだ。」 京次は笑顔で命の頭を撫でてやる。
命は、サラが義手義足を外すのを好まない。 サラの弱々しい姿を見たくないと思っている。
嫌いなはずのサラに対し、何故そう思うのか全然解っていないと思われるが、京次には理解出来た。
「でもな命、 間違えるなよ? サラは義手義足外しても堂々としてるだろ? サラ心根は、どんな時も弱くなんかないんだ。」
「?」
京次は、全然解ってない命の頭をもう一度撫でてやった。
ま
京次の言う事に、絶対間違いは無い。そう信じて疑わない命は、サラの義手義足を抱え、たまに京次を振り返りながら自室に消えた。
おそらく、京次が出かけた後、帰って来るまで自室から出てくる事はないだろう。
「少し、遅くなるかも知れん。 俺の帰りが遅いのを命が心配し出したら、そう伝えといてくれ。」
「いいけど...」
サラは、いつもの無感情な目で京次を見つめる。
先ほどから感じていた事だが、今の皆月京次の心はかなり乱れている。 何時もと変らない態度や表情が、逆に不自然に思える程だ。
命が、三人で出掛けるのを提案したのは、その事に気が付いていたからなのだろう。
「まあ、あんたなら、心配ないかも知れないけど...」
サラは、京次の強さをその身で体験している。
「勿論、心配はいらないさ。」
サラの口から心配と聞いたのを嬉しく思いながら、玄関の扉を開けた。
バタン、