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俺と詩女は、デートのつもりで、少なくとも二週間に一度は会っている。 しかし会話の内容は、もっぱら一人息子の事ばかりだ。
今日も例にもれず、人気の少ない公園でもって、貴時の話に興じている。
砂場やジャングルジムなどの遊び場が、申し訳程度にある小さな公園。 普通なら、子供たちが集まっているのだろうが、夕方と夜の境目にあたる今の時間に人影はなかった。
もう、学校はとっくに終わり、命も今ごろはアパートに帰っている頃だろうか。
「困った子よ。頭良いくせに、あの女の娘の通っている中学を受けたいだなんて。」
話の内容の大部分は、グチ。 まあ、これも重要な役回りだと思っている。
「まあ、その辺は、本人の希望を尊重してだな、勉強なんて本人のやる気次第だし。」
もっともらしい事を言ってみたが、勉強した事のない俺が言っても、全然説得力がない。 詩女の小馬鹿にした様な表情が、そう言っている。
「ま、ね、」 とりあえず答えました。そんな言葉の後、詩女の表情に妖しい色が混じる。
「で、今日は、いつまで一緒にいられるのかしら?」
ヤるまで。などと野暮な事は言わない。同じ意味でも、雰囲気を壊さない言い方はわきまえている。
「ん、そうだな、お前が望むままに、な。」
「みこと!!」