桐子と鳳仙圭の水晶が光輝き、かざした手の平からも、淡い光が見えた。
「鳳仙桐子、こいつが妙なマネしたら教えろよ?」
鳳仙圭も、このメンツに囲まれて何も出来はしないであろうが、一応クギを刺しておく。 桐子はコクリと頷いた。
二人の発する光は暖かく、まったく呪術を理解していない者でも、その光が人に害を為すものでは無いと解る。
貴時は、身を屈めて、命には聞かれないように、小声で桐子に問いかけた。
「止血だけで、どれぐらい掛かる?」
「さ...30分ぐらい。」
桐子の答えに、思わず顔をしかめる。
現在、京次の心臓は止まっているし、呼吸もしていない。
心臓が何時止まったのかは確認していなかったので定かでは無いが、蘇生時間の期限は、心臓が止まって約3分が限度。
それ以上、脳に血が回らないでいると、たとえ助かっても植物状態は免れない。
本当なら、今すぐに心臓マッサージと人工呼吸をしたいのだが、血を送るポンプである心臓が動くと、出血が更に酷くなってしまう。
人間、三分の一の血液が流出すると生きられない。 現在の京次の出血量は、素人目に見てもそれを遥かに超えていた。
貴時は、桐子や命よりも人体の仕組みに詳しい分、焦りも大きい。
つ
貴時が、一か八かの賭けに出ようとした時、その声は聞こえた。
「中々苦戦していますわね。」