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辛うじて両腕で『黒い瞳』の一撃を防いだ皆月京次の体が揺れた。
ガードしたとはいえ、その威力は両腕を突き抜け、皆月京次自身にダメージを与えていたのだ。
貴時に取って、皆月京次という男は、良くも悪くも目の前にそびえる山の様な存在だった。 父親であるという欲目は有るにせよ、世界で一番強いのは親父であると本気で思っていた。
誰かを守る時、自分という存在は必要無い。何故なら、親父一人で充分だから。
だからこそ、その親父を越えてこそ、初めて自分の存在価値が有る。
絶対無比の強大な山、それが貴時の父親。
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しかし、目の前の現実こそ真実である。
思いたく無いが思い知らされた貴時の頭の中にそれが浮かぶ。
そしてもう一つ。
姉を救う方法が見付けられない貴時の頭に浮かぶ、もう一つのセリフ。
つ
「.........?」
しかし、そのセリフは貴時が明確に思い浮かべる前に、聞き覚えの無い女性の声によってもたらされた。