雪之絵命。 自分の娘の変貌を達観した表情で見つめる雪之絵真紀の横を、隣の部屋から飛び出て来た鳳仙圭が、ほうほうの体になりながら通り過ぎた。
視線だけをその方に送る雪之絵真紀に気がつく事なく、廊下の壁に手を付くと、その壁は鳳仙圭を巻き込んでクルリと回転した。
流石は鳳仙屋敷。 各所にこの様な忍者屋敷まがいの個所があって、自由に色んな場所を行き来できるようになっているのだろう。
暫くその様子を何気なく見ていた雪之絵だったが、直ぐに視線を、テレビ画面に映る雪之絵命に戻した。
今すぐ鳳仙圭を追えば追いつくだろうが、正直、もう鳳仙圭にかまっている場合では無くなった。
地震とは違う、体が痺れるような超振動。
鳳仙屋敷全土を揺るがすそれは、屋敷内にいる全員を内側から振るわせた。
『黒い瞳』の発動により、直接的に被害を受けるであろう、鳳仙圭と陸刀アケミは当然として、ただ雇われているだけのSPや、貴時と皇金も、その振動の正体を、はっきりと理解した。