リ
マルキーニの側にいたはずの屍達が、残像を残して陸刀家のヒットマン達を取り囲んだ。
それは、朱吏陽紅さえも例外ではなく、総勢二十人の”元陸刀ヒットマン”の瞬発力は予想外の速さであった。
元々、マルキーニの静電気の為に、力だけは強力だったが、今回はそれだけではない。 明らかに生きた人間を凌駕するスピードも兼ね備えていた。
「慌てるな! 屍の動きは、ただ速いだけだ!落ち着けば簡単に捌ける!!」
そう叫んだ通り、朱吏陽紅は、流れるような身のこなしで屍達の攻撃をさばいた。
エデンマルキーニが、戦術など心得ているはずもなく、屍の攻撃は相変わらず単調だった。 死ぬ前は、自分独自の獲物を使えただろう”元陸刀のヒットマン”達だが、今はその面影はない。
ただ、真正面からつかみ掛かってくるだけの屍達に、殺しの技術を幼少から叩き込まれた陸刀のヒットマン達が遅れを取るはずがない。
皇金や他のヒットマン達も、多勢の屍相手に、互角以上の戦いを展開して見せた。
無論、それは高森夕矢も同じ事で、自分を囲んでいる屍達の攻撃を捌きながら、正確に拳を撃ち込んで行く。
神経を集中していれば、負けないであろう相手。
落ち着きを取り戻した高森は、視線だけで”赤い髪の少女”を探す。
すると、出遅れた為に、後方で慌てている彼女の姿が見えた。
高森夕矢は、赤い髪の少女と背中合わせになるように移動する。 皇金も同じ事を考えたのか、すぐに側に寄ってきた。
三人、お互いの背後を守る。
これで正面からの攻撃にのみ、神経を集中出来る。
腹に撃ち込んだ拳の感触に違和感を感じた高森が叫ぶ。
「そのようだな。 どうやら臓物は抜かれているらしい。肉体も腐っていないと言う事は、特殊な薬品を使っているのだろう。 」
「誰がこんなマネをしたのかは知らないが...」
それは、やはりエデン母だろう。
しかし、マルキーニの様に、本気で死体を生き返らせたと信じているならば、こんなマネはする必要は無いのだ。
「どうやらそいつは、マトモな思考を残した確信犯のようだな。」
エデンと総称される殺し屋の実状などまったく知らない高森には、皇金の言葉は、まったく意味不明だった。 ただ、マルキーニの方へ、思わず視線を送っただけ。
しかし、それが為にある事に気が付いた。
「!!」