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雪之絵真紀の向かった先は、行きついた先に階段があり、二階に上がれる。
しかし、京次の向かった先には、二階へ上がる階段の前に、エデンの家族のいる客間があった。
「おかーさん、あのおっちゃん怖いよ...」
自分にしがみ付くマルキーニに対し、エデン母は、笑顔で頭をなでる。
「大丈夫よ。 私がちょっと行って、倒して来るから。」
呆気に取られるマルキーニをその場において立ち上がり、カーテンに仕切られた化粧室の中へと消えた。
「えー!? おかーさん一人で行くの!? ダメだよーっ 私も行くーっ!」
今まで、幼いながらに修羅場を潜ってきた彼女には、皆月京次がどれ程危険な相手なのかカンで解る。 しかし、正直言って、エデン母に取って、マルキーニの存在は邪魔でしかなかった。
マルキーニの使う”お友達”も、双子の兄も、京次に通用するとは思えない。
再び、マルキーニの頭を撫でる。
「おとーさんも、マルキーニをお願い。」
マルキーニが、上目使いで、しぶしぶながらも頷いたのを見て、満足気に笑った後、エデン母は立ち上がる。
ある種の決意を秘めた表情をマルキーニに見られないように踵を返し、静かに部屋を出て行った。
進む廊下の先には、皆月京次がいるはずである。
急いで部屋から顔を覗かせたエデンマルキーニだったが、母親の姿は、既に廊下の闇の中に見えなくなっていた。