やっとの思いで自分の部屋まで逃げて来た命は、二回、三回と、自分の足を殴り付ける。
痛みによって、両足の感覚を取り戻した命は、よろけながら立ち上がってドアを開けると、ベッドの上で喘いでいたタケ子が頭をもたげた。
「...どうしたの?」
命の雰囲気が変わっているのを、敏感に感じ取ったタケ子が呟く。
「......」
何も答えないで、フラフラと近づいて来た命がベットの上に倒れ込み、タケ子の肛門に刺さっていたバイブを抜き取った。
「!」
バイブと一緒に出そうになってしまったウンチを、辛うじてガマンしたタケ子は、命の行動を不審に思いながらも、大人しくしていると、とうとう両手首を繋げていた手錠も外された。
「命、ホントどうかしたの?」
手首についた手錠の痕を気にしながら上半身を起こしたタケ子に、命が飛びつく。
「タケ子、今日はこのまま一緒に寝て。 お願いだから明日、明るくなるまで一緒にいてよ。」
震える声でそう言った命だったが、震えているのは声だけでは無い。 抱き付かれているので解る。 全身、それこそ頭から足の先まで小刻みに震えていた。
何やら命は、”元に戻ってしまった”ようだ。 今の命に、雪之絵の血の影はない。
「そりゃ、今日は泊まる予定だったし、もうこんな時間だからいいけど...」
このまま寝てしまったら、当然これでエッチは終わりだ。
落胆を隠せないタケ子だったが、命が自分をアテにしていると知り、持ち前の面倒見の良さが頭を擡げる。
それに、命に責め続けられたおかげで、タケ子の体力は底を付いている。 それならばヘタに責めるよりも、ここで恩を売っておいた方が、命との仲は後々更に好転するとの下心もあった。
「解った。 でも、明日まで命の体を抱きしめたまま離さないからね?」
命を抱いたまま、倒れるようにベットに寝転んで、布団をかぶる。
寝ているシーツも、被った布団も、二人の行為で流れた体液で濡れているが、タケ子はそれに関しては気持ち良いとさえ感じた。
「...タケ子、さっきはゴメンね?」
「止めてよ!私は命になら何をされてもいいって言ったでしょ!?」
命は、先ほどまで散々タケ子を苛めたのを謝った。 しかし、命に服従する喜びを覚えてしまったタケ子は、今更そんな事を言われても嬉しくない。
「...タケ子、」
「今度は何?」
「私って、女として、どれぐらい魅力あるんだろう?」
「は?」
思わず聞き直したタケ子に、悲壮感を漂わせた命の瞳が向けられる。
「...命より魅力的な女の子なんて、私は知らないわ。」
苦笑してタケ子が、答えると、命の瞳は縋る様に変化した。
「本当?」
きゅっと抱きしめてやると、命も抱きしめ返してきた。 エッチな事はしていないが、裸でただ抱き合うのは確かな幸せを感じる。
そんなタケ子の気持ちを余所に、命の股間からは、まだ愛液が滴れていた。
頭から離れない、女を抱く京次の荒々しい姿。そして、京次の体の中で一番魅力的であろう、そそり立った大きな肉棒。
『私は誰よりも魅力がある。 私は誰よりも魅力がある。 私は誰よりも魅力がある...』
命は、心の中で呪文の様に繰り返す。
キスまでは持ってきた、京次との関係。
しかし、もし拒否されたらと思うと、それ以上執拗に迫るのは恐くて出来なかった。
それに何よりも、
、
最終話、(その二) 終