「...もういいか?」
三人の中でリーダーなのは、実力的にも知名度から言っても、マルキーニを捕まえているトラップの名手である。
そのリーダーの言葉に、角刈りの男と長髪の男が、力無く倒れるエデン母に未練を残しながらも立ち上がる。
リーダーは、そんな二人の様子も気にする事なく、エデン母から奪った注射器を眺めていた。
「この注射器の中身、...この中身がお目当ての薬だと確認したい所だな?」
リーダーの、呟くように言ったその言葉に、角刈りと長髪の両男がハッとする。 自分達の属する大国の組織から命ぜられたのは、『エデンの家族全員を事故に見せかけて殺す事』そして、『エデン母が開発した人間強化剤の奪取』である。
組織の目的は、エデンの家族そのものよりも、むしろ『人間強化剤奪取』の方が大きい。
エデン母を殺した後で、実はこの薬は別物だったとなれば、もう二度と『人間強化剤』は手に入らない事になる。そうなれば、実力者のリーダー格の男はともかく、他の二人は即始末されてしまうだろう。
「私を使って確認すれば良いですわ。」
「?」
「その薬の半分を、私に使ってみれば良いんですわ。 その結果、女の私が強化されたとしても、大の男三人もいれば問題無いでしょう?」
エデン母の挑戦的な視線。 角刈りの男と長髪の男二人は気にしなかった。
「それ、いい考えなんじゃないですかね?」
「...馬鹿を言うな。その女が手負いでなければ、お前達二人など敵では無いぞ? そんなやつを強化させられるか。」
ちっ...
エデン母の小さな舌打ち。
薬の力を借りれば、この三人を倒せると踏んだのだが、流石にこんな愚計に掛かってくれない。