通学路の途中にある、小さな公園。
その公園を囲むブロック塀にもたれながら、ぽつんと立っている学生服姿の少女が一人。
学校の授業が全て終わった後、掃除当番のサボリを決め込むと同時に、雪之絵命を誘って帰路についた。
しかし当の命は、帰宅途中に用事があると言い出して、現在公園の中で、その用事の真っ最中なのである。
公園の中に幾つもあるベンチの中の一つに、命は、男と並んで坐っていた。
『先に帰ってていいよ?』と言った命であったが、嫉妬と不安にかられたタケ子がこのまま大人しく帰れるはずもなく、命の用事が終わるのを待っているわけだ。
しばらく、命が一方的に話た後、笑いながらベンチから立ち上がる。
どうやら用事が終わったらしい。 そのまま命はタケ子に向かって駆け出した。
「ゴメン待たせたね。」
「...いいけど。」
タケ子の視線は命よりも、今だベンチに座りタバコを吸っている男に向けられている。 勿論、敵意丸出で。
「それより、あれ誰。」
「ん?ああ、知らなかったっけ?
「え!?」
思わずタケ子が声を上げた。
タケ子は、命の複雑な家庭環境を、ある程度は知っている。 詩女という正妻が京次にはいて、その二人の間に男の子がいる事も知っている。
しかし、その男の子を見るのは、今日が初めてだった。
「私と貴時はね、たまに情報の交換してるの。」
命と貴時が、お互いの近況を話すようになったのは昨日今日の話ではない。 始めは、京次が浮気していないか?とか、鬼嫁詩女と週何回会っているのか?のようなゴシップ情報でしかなかったが、最近では、もっと大切かつ重要な話を貴時は持ってくる。
そう、貴時が持ってくる情報は、学校で命が陸刀のヒットマンに襲われてから、ガラリと様変わりしていた。
命は、京次が母親の雪之絵真紀を嫌っていた事を知っているので、京次に直接聞けない事が沢山ある。 それら全てを、貴時に聞くようにしていた。
また貴時は、命が知りたい情報を詳しく調べ、貴時自身が伝えない方が良いと判断したもの以外を命に伝えるようにしていた。
伝えない方が良いと判断した情報には、カズ子とタケ子の事や、雪之絵真紀の居場所などが含まれる。
貴時がどうやって、そんな情報を調べているのかは解らない。 いや、ハイテク機器を使った方法などを、命が聞かされたとしても、まったく理解不能だろう。
機械にめっぽう弱い京次の遺伝子は、特に貴時には遺伝しなかったらしい。
「正直、相当意外だわ。 鬼嫁さんとあになに仲悪いのに、その子供とは仲良いんだ?」
「だって、あいつ、パパに似てるもん。」
歩き出そうとした命を、貴時の呼び声が止めた。
ん?と、声を上げて振り返ると、タバコを咥えた貴時がベンチから立ち上がり、命をじっと見つめていた。 中学一年生の身長は決して高いとは言えないが、態度がデカイ分、見た目以上に大きく感じる。
「なーに?」
貴時は、命が知りたい情報を詳しく調べ、貴時自身が伝えない方が良いと判断したもの以外を命に伝えるようにしていた。
伝えない方が良いと判断した情報には、カズ子とタケ子の事や、雪之絵真紀の居場所などが含まれる。
それから、もう一つ。
「...なに言ってんの?」
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