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「おい!!?」
京次は咄嗟の判断で、アケミを草むらの中に押し倒す。
「うふっ、京ちゃん乱暴。」
草の折れる音と共に横たわったアケミが、自分の上に乗っている京次を見上げる。
笑顔が消え、抱きしめる様、首に両腕を回した。
「...しよ?」
「こっ、ここでか!?」
アケミの色香に迷うことなく、京次が辺りを見回すと、川沿いの道で先ほどまで京次を見ながら騒いでいた女学生の団体が、目を丸くして、こちらを凝視していた。
所詮、雑草ごときでは、大人の全身を隠すまでにはいたらず。 さらに川沿いの道までの距離も、それほど離れているとは言えない。 京次から見て、女学生の驚いた表情までハッキリと見て取れた。
「見えるし、見られてるぞ? 」
「 私が、京ちゃんのものだって、大勢の人に知って欲しいの。」
京次は、キスすら人前ではしたくない”硬派側”の人間である。 まして公開エッチなど問題外なのだが、元々、今日、アケミと待ち合わせしたのは、傷ついたアケミを癒す為だ。
アケミの願いを平気で断れるぐらいなら、初めから、今日会おうとは言わなかった。
言わなかったとはいえ、出来ることと出来ない事があるのも事実である。 これは、京次に取っては出来ない部類だ。
「...京ちゃん、そんなに嫌?」
一人、オロオロしている京次に、アケミのトドメの一言。 その表情は今にも泣きそうだった。
「アケミ...今までと、ちょっと性格違うぞ?」
「んふっ。 髪短くしたから、性格もイメチェン。 でも京ちゃんには、こっちの方が有効そうね?」
違う、これが本当のアケミだ。 今までの髪の長かった頃のアケミが、作り物なのだ。
「京ちゃん? 私、知っての通り沢山の男として来たし、どんなアブノーマルなプレイもした事あるわ。それこそ、経験のないプレイなんて思い付かないぐらい。」
自分の言葉に泣きたくなる。 今までの経験で、行われていない行為が本当に見当たらない。
「他の男が私にした行為を、京ちゃんがしていないなんて、我慢できないの。」
「俺に義理立てして、嫌な事までする必要はないぞ。」
「逆よ。」
ここまで言われて、
まだ怖じ気図いているようでは、あまりに情けないと言うものだ。
「解った。 とりあえずアケミが一回イクまでな。」
「じや、なるべく我慢しなくちゃ。 勿体無いからね。」
「出来るもんならな。」
キスをしながら、胸を包むように揉んでいく。
手の平に摩擦され、乳首があっさりピンと立った。 見るからに、触られていた右乳首の変化が分かる。
キスが離れると同時に口から洩れる喘ぎ声。 京次は、『後ろの女子高生にも聞こえてるんだろーな。』とか思いながら、耳、首筋と定番な場所を舐めていく。
誰でも責める定番な場所。 しかし、京次のそれはアケミの欲情を無理矢理高ぶらせる。 広く、耳、首筋と言っても感じる部分は神経の細い線だ。 京次はそれを、線路にはまったかのようにトレースして行く。
じわり、下着が濡れていくのをアケミ自身も感じた。
アケミが驚愕の声を洩らす。
京次が上手なのは知っているし、自身の気持ちが拍車を掛けているのも解っているが、幾らなんでも体の準備が出来るのが早すぎる。
アケミは青くなった。 今、自分の体の反応が早いのは、今日行われた『接待』のせいだ。
「ん? もう良いのか?」
京次が意地悪な顔をして、下着の股間の部分を横にずらした。 垂れ流しといった濡れかたをしている股間が、夕日に照らされるが、人の目に晒されぬよう、京次の腰があてがわれる。
どうやら、野外行為という異常な状況は、京次の高ぶりを手助けしていたらしく、行為が始まって間もないと言うのに、モノは完全に勃起していた。
「きょ、京ちゃんっ!ちょっと待って...!!」 このまま、『接待』が原因でイカされたくない。
体をくねらせて抵抗しようとしたが、ズボンのチャックを下ろした途端飛び出した、京次のペニスを目の当たりにしたと同時に我を忘れた。
動きの止まったアケミを尻目に、京次は、アケミの腰に自分の腰を押し付けた。
立派と言っていい京次の肉棒が、アケミの股間を割り開く。
「あっ!!」
初め、ゆっくり動く京次の腰は、時間と共に激しさをまして行く。
激しくなる途中、アケミの好きなリズムまで到達した所で、その動きを一旦キープした。
もう、体の自由を奪われる程感じているアケミは、短くなった髪を振り乱し、自分の乳房に爪を食い込ませて快感に堪えている。
「...いゃっ、嫌っ!このままイカされたら終わっちゃうじゃない!!京ちゃん、やめてよ!!」
本当に嫌がっているアケミの目から、涙が零れた。
「...しょうがないなあ。」
思いがけない反応に面食らい、自らの腰の動きを緩めて軽く抱きしめてやる。
「はあっ、はあっ、はあっ!」
息を整えるアケミ。 防波堤を突破する寸前だった快感が、潮を引くように遠のいていく。
「はあっ...あ?」
京次の唇の感触が、閉じている目元にあるのを感じた。
どうやら、キスでアケミの涙を拭い取ってくれていたらしい。 落ち着きを取り戻して、やっとそれに気が付いた。
「こんな事、俺以外の男にしてもらった事ってあるのかい?」
「...無いわ。 ある訳ない。」
そう、ある訳がない。
アケミを抱きに来る男どもが、そんな優しさなど微塵も持っているはずがない。 例外なく、自分の欲望を満たす為だけにやって来るのだ。
「さっきアケミ、『経験のないプレイなんて思い付かないぐらい。』そう言ったけど、結構あるかも知れないぞ? 俺としかできないプレイってのがさ。」
な? と笑顔で言葉を締めくくった後、アケミに大人のキスをする。
口の中を這い回る、京次の舌を感じながらアケミは考えた。 それを言うなら、優しく抱きしめてもらった事もなければ、優しいキスだってしてもらった事はない。
優しさから来る行いは、全て皆月 京次ただ一人だけがしてくれるのだ。
「ああ...」
アケミは自分からも舌を絡め、貪るように求めた。
優しくしてほしい男が、優しく扱ってくれるという、涙が出る程嬉しい現実。
だが、それを喜ぶと同時に、申し訳なくも思う。 最後まで優しく抱いてくれる京次は、きっと自分が気持ち良くなる事よりも、アケミを感じさせる事を優先しているという事なのだろう。
考えてみたら、今まで、『勝負』と名づけたエッチの中で、京次が自分を優先させた事など一度もなかった。
「......」
『結構あるかも知れないぞ? 俺としかできないプレイってのがさ。』 そうであって欲しい、京次の言葉。
アケミは考える、
『まだ、他の男にした事のない行為。 された事のない行為。』
「...京ちゃん?」
「ん?」
「私が、京ちゃんの子供を身ごもったら...」
「え゛っ?」
「お腹の大きくなった私を、抱いてね?」
「なあっ!?」
アケミは、過去の酷い記憶を思い出した。
『男の中には、妊婦で遊びたいやつがいるんだよ。』 考えられない鳳仙圭の言葉。 だが相手が京次なら、全然平気だと本気で思った。
「京ちゃんなら、私とお腹の赤ちゃん優しく包みながら抱いてくれると思うから、していいからね?」
していいからね?と言われても、京次は困る。 子供を造るのも困るし、妊婦を抱くなんて危なくてしかたがない。
明らかに困り果てている京次の表情にまったく気が付いていないのか、アケミは更に続けた。
「その頃は、きっとオッパイとかも出ると思うんだ。 京ちゃんには飲ませてあげるからね?」
青ざめた京次が、『それ、あんまり嬉しくない。』そう言おうとした時、アケミが嬉しそうに笑いながら、京次にしがみついた。
「嬉しいわ! 京ちゃんにだけして上げられる事、ホントに残っていたわ!! これは絶対他の男にされるはずないものね!? ...ああ、嬉しいわ。 私の夢だわ...。」
「ゆ...夢なんすか?」
「うん、夢だわ。 適えられたら、どんなに幸せだろう...」
当然、「俺それ嫌だ。」などと言えるはずもなく、京次は固まっていたが、アケミの股間に収まっていた自分のモノは、この時すっかり縮こまっていた。