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屑男 撲滅委員会!

−ブラック・アイズ−

 醜悪な男達に、決して拭い取れない内側から汚されている自分の体。

 成長期の頃から汚され続けたその体は、大人へ成長した骨すらも、きっと男達の排泄物を吸収して造られた部分があるのではなかろうか。

 自分が、どれだけ汚れているのか。

 それを認識する度に、アケミは、必ずある所へ電話をかける。

 自分の本当の姿を認識する度に、罪悪感が胸を覆う。

 汚れた自分を隠して抱いてもらっている、あの好きな男への罪悪感。

 シャワー室の壁にもたれ、膝を抱えて蹲ったまま、震える指で携帯電話の短縮に入れた番号を呼び出す。

いつも、いつも、謝りたくて電話をかける。

『はい、皆月です。』

 幾つかの発信音の後、最愛のあの男の所へと繋がった。

「あ、私。 分かるー?」

 わざと明るい声を出してみる。

『アー...分かるぞ?』

 アケミと言いそうになって、途中で止めたようだ。 理由は、皆月京次の後ろから、ツインテールの女の子の騒ぎ声が聞こえている事からもお解りだろう。

『どした? 何かあったかー?』

「んー?別にー、ちょっとヒマでね? 話相手になってもらおうかなーってね。」

『......』


「...どうした? 本当に何かあったか?」


 アケミは、演技には自信がある。

 そうでなくては生きて行けない。言わば自己防衛本能。 それゆえ、 どんなに落ち込んだ時でも普通にしゃべる自信がある。

「えー?別にホント何もないよー?」

『待て、言ってみろ。 何かあったのなら言え。 必ず俺がなんとかしてやるから。』

 それでも皆月京次は、アケミが落ち込んでいる時、傷ついている時に、それを見逃さない。

「ヤダなー、 ホント何でもないってばっ。」

 本気で心配して、声をかけてくれる。

「...そーお? それじゃさあ、」

 「明日とか会ってくれる?」

だからアケミは、本気で皆月京次を好きになった。

 『自分が、どれだけ汚れているのか。』 それを認識する度に、アケミは嫌われるの覚悟で、本当の事を話そうと、電話をかける。

 だが、その度にアケミは思い知るのだ。

 友達を失い、家族を失い、親になる資格さえ奪われた、今や何も残っていないアケミが、たった一つ得た大切なもの。

 皆月京次だけは失いたくない。

「...京ちゃん?」

『何だ? だから言ってみろ。』

「私、京ちゃん一人だけの物になりたいな...」

それさえ適えば、たとえ死んでも本望よ。

 アケミは、

 京次の大切な娘である雪之絵命を犠牲にして、鳳仙の呪縛から逃れようとしている。

 これが成功すれば、皆月京次はアケミを許さないだろう。

 鳳仙の奴隷であり続けるかわりに、京次の愛情を受け続けるか。 自由になるかわりに、京次に嫌われるかの二者択一。

 それさえ適えば、たとえ死んでも本望よ。

 それがアケミの結論。

 自由の身になった後、皆月京次に殺されるのならば、それは本望。


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