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「待てやオイ!!何のつもりやねんな!!そりゃ!!!」
命がテーブルを叩いて立ち上がる。 無理もない行動ではある。
「し、しかたがないだろ? 両手使えないんだし。」 京次のこの言い分も、しごくもっともである。
命の口がぱくぱくと何かを言おうとするが、言葉は出てこない。 ただ気に入らないと言うだけで、正当な反論の理由など元々何も無いのだ。
「我慢しろって、風邪の時とか、命にも食べさせた事あったろう?」
コイツお風呂はどーすんの!!?」
「あー、そりゃ、あれだな。 命が洗ってやるか、俺が洗ってやるか...」
「私は嫌!!パパはもっと嫌ーーーーーっ!!」
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で、結局、考えてみたら、たとえ義手義足をサラメロウが付けていた所で、皆月京次が側にいれば、全然危険でない事に気が付き。(元々、サラメロウでは、京次には全然敵わないから。)
義手義足を外すのは、京次がサラメロウの側にいない時だけと決まった。
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「そうゆー事で、サラ、今は義手義足を付けてもいいぞ? 一人で付けられるかい?」
今だぶーたれる命を尻目にサラメロウは小さく肯き、一人で、ぴょこぴょこと跳ねながら居間に消えた。
「...何で、アイツ、ここを出て行こうとしないんだろう? 解らないな。」
命が、もっともな疑問を呟く。 京次はその問いに答える訳にはいかなかったが、二つの理由は想像出来る。
一つは、どこかで見張っているであろう雪之絵真紀の存在を、サラメロウも知っているからだ。 雪之絵真紀と皆月京次の実力は、ほぼ同等と見ていい。
きっと、このアパートから出た途端、自分は雪之絵真紀に殺される。 その事を、サラ自身よく解っているのだ。
そして、もう一つは...
「何だ?義手と義足付けたのに、マント羽織ったままか?」
再びリビングに現れたサラメロウの出で立ちを見て、思わず京次はそう言った。
「汚れるから。」
それに答えたサラメロウの言葉。 京次は、少しだけ考えて、その意味に気付く。
汚れると言ったのは、間違いなく、サラメロウが今着ている私服の事だ。
サラが着ている私服は、命のお古である。
命が、もう着ないと言っていたのを一着上げたのだが、どうやら本人、気に入っているらしい。
京次は、笑うしかなかった。 そして、後もう一つの理由もあながち間違っていないのではないか。そう思い始める。
もしかしたら思い違いかも知れない、もう一つの理由。
食事の時だけは、やたらと幸せそうにしているサラメロウを見ていると、京次はどうしても、そう思えてしかたがなかった。