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「いや、スマン。 命が酷い事言ってたが、ありゃ俺から離れたくなくて、思わず出た言葉なんだ。」
待合室から、廊下に出るなり京次が拝み倒す。
「それは良い! だが、確か命ちゃんには、母親がどこかで見守っていると言っていなかったか?」
「え?俺そんな事言ったっけ?」
呆けようとする京次だったが、基本的に京次と君寧明人は何でも包み隠さず話し合える間柄だ。 加えて君寧明人は、記憶力抜群である。
「確かにお前の口から聞いた!!もっとも、聞いた時は信じていなかったが...」
言いながら、過去の苦い記憶を思い出す。 命自身はともかく、母親の雪之絵真紀には二度と関わりたくない。 と言うのが本音である。
みるみる青ざめて行く君寧明人を見ながら、京次は深くため息をついた。
「命はダメか...だったらサラなら、どうだ?」
「おおっ!!あの娘こそ、一体何なんだ!!? あの目は間違い無く、
人を殺した事のある目だぞ!!?」
「良く解ったな。 いや、その通りだ。」
ガチャーン!!
京次と君寧明人の耳に待合室の中から、何かが壊れる音が聞こえた。
「あーあ、命とサラが、またケンカ始めたよ。」
顔を上げた君寧明人に、やれやれ、と言った感じで頭を振る京次が見えた。
「馬鹿ーっ!!この部屋には高価な物が沢山あるんだぞ!? 落ち着いてる場合かっっ!!」
叫びながら待合室に飛び込む、君寧明人。
確かに、この待合室のソファーや、飾ってある壷は、高価な物ばかりだ。 アケミが勤めていた頃、荒稼ぎした結果である。
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