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窓ガラスをぶち破り、奇麗に並んだ机や椅子をなぎ倒して教室の中央で止まったその物体は、間違いなく数学の先生だった。
傷だらけの人を”ボロ雑巾”と形容する事はあるが、割れた窓ガラスに体を刻まれた数学教師の姿は、正にそれに相応しかった。
理解不能の状況下に置かれたクラスのみんなは、静寂に包まれる。 それは、幾つかの修羅場を潜ったであろう高森夕矢すらも同じだった。
しかし、その呪縛は、教室の中央で微動だにしない数学教師の体を中心にした血溜りが、タケ子の足に届いた事によって開放される。
「きゃあっぁぁっーーーーっ!!」
鮮血がわざわざ自分に向かって来る様な錯覚に捕らわれながら、タケ子はその場から飛び退く。
タケ子の悲鳴によって呪縛から解かれたクラスメートであったが、逃げ出す事は出来なかった。
既に教室の中に、数学教師をこのような姿にしたであろう犯人が逃げ道をふさいでいたからだ。
全員が恐怖の眼差しを、彼ら犯人に向ける。
ブロンドの髪を天井に当てかねない長身の男と、逆に女の子よりも小柄な赤一辺倒の身なりをした男、そして最後に浅黒い肌をした青いマントの女だ。
クラスの中で、唯一事情を理解したカズ子が青くなりながら、昨日話をした陸刀家の実力者の言葉を思い出す。
『何時まで待っても、皆月 京次と雪之絵 真紀の接触はないわ。』
その二へ続く、