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屑男 撲滅委員会!

−ブラック・アイズ−

「もしかして...」

「僕も、そう思います。この前の侵入者の仲間でしょう。 京次さん、気が付いていたんだと思います。」

「パパ一人で出て行ったって事!?探さなきゃ!!」

 青くなった命が、考えもなく走り出そうとするのを、高森が腕を掴んで押し止める。

「待ちなさい!京次さん、まだ外には出てません!!」

 ??

 訳わからない、と言った表情の命に、高森が続ける。

「ずっと外を見てましたが、玄関からも横の非常口からも京次さん出て来ませんでした。 それに、外の悪意は静まったままです。」

「つまり、パパは、まだ病院の中にいるって事?」

「そう言う事です。 探すなら病院の中からです。」

ダン!!

 混乱している場合ではない事ぐらい、命にも解っている。 命と高森は同時に走り出した。

「まあ、パパなら、あんなヤツ等に後れをとったりしないと思うけど...」

 廊下を走りながら呟いた命に、高森が苦渋の表情を見せた。

「すみません、京次さんに言っておくべきでした。」

「な、何を?」

「僕が思っている京次さんの力は、命さんが倒した金髪の侵入者(皇金)と同じぐらいです。」

 命は思い出す。自分が一方的に打ち砕いた、侵入者の事を。

「何言ってるの?パパがそんな弱い訳ないじゃない。」

 命はせせら笑うが、もしそれが真実だとしたら、命を倒したサラメロウ等に、京次は絶対勝てない事になる。

 まして侵入者は、仲間を再起不能にした命を怨んでいるはずだ。その父親の京次への報復は、それ相応な物になるだろう。

「娘さんが、京次さん越えたかも知れないって、言えませんでした。 」

「やめてよっ!!高森がパパの事知ってるのって、空手道場だけでしょ!? パパが全然本気出してないの知ってるくせに!!」

 命の言うように、高森は京次の底を見た事がある訳ではなかった。 しかし、相手から受けるプレッシャーと言う点で、京次は皇金と同じレベルだったのだ。

 喚いた命にしても、京次の底を知っている訳ではなかった。 空手の技を教えてもらっても、京次が娘の命に本気で攻撃を仕掛けるはずがない。 命も、それを承知で相手をしていた。

「パパは強いのよ!!何時の間にか、私がパパより強くなっているなんてありえないわ!!」

「正直、僕も、自分に見る目がない事を望みますよ。」

「随分前に俺は、ここに入院してた事あってな。」

 医院から病院に名前が変わる間に、建て増しに建て増しを重ねた、この病院。

 洗濯物を干す為に使う屋上が病院には幾つもあるが、建て増しの際に増築の建物に太陽を遮られ、その用途をまったく果たさなくなった、役立たずの屋上が一つだけあった。

 普段誰も使わないこの屋上、しかし入院中も体を動かしたかった京次は、人目を盗めるこの場所をよく利用したものだった。

「どうだ?ここなら邪魔は入らないだろう?」

 

問題の答、 その一 おわり。    


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