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「そんなわけでさー、すっごい眠いのよねー。」
「どうしても、私の方が先に寝ちゃうのよね。そのくせパパって朝練で起きるの早いし。」
命を始め、タケ子にカズ子、高森 夕矢も同じ一年A組のクラスメートである。
いつものメンバーに加え、校舎の造りが姉妹校だった中学校と似ているため、全然新鮮味がない。
まだ制服のノリすら完全に取れていないというのに、態度は既にベテランの高校生である。
「もう駄目、眠すぎる。次の授業サボっ寝て来るね。」
椅子を引いて立ち上がると、頭を右に左にとゆらしながら扉に向かう。
「保健室入るには、先生の許可いるよー。命みたいなの多いから。」
後ろから聞こえたカズ子の声に、「んじゃあ、中庭で寝るーっ。」と一声残して教室を後にした。
中庭には、一本大きな木が植えてある。
その木の広がるように茂る葉っぱが傘になって木陰を作り、昼寝や昼食に利用する命達のお気に入りの場所である。 最近、力ずくで上級生から奪ったのだ。
一年生の教室は校舎の一階にあるため、中庭まではすぐに行ける。
命はA組に隣接する教室の中に、誰も居ないのを眺めながら廊下を進む。
「B組とC組は体育。」
この学校は体育は他のクラスと合同で行われる。
各学年にクラスは六つづつあるが、このフロアーに教室は三つしかない。 つまり、騒がしいのは命達のA組だけだ。
また、命が次の授業も近いのに、のこのこ歩けるのもこの為だ。
よそ見しながら歩いていると、ガラス窓の向うに中庭が見えて来た。