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屑男 撲滅委員会!

−ブラック・アイズ−

 雪之絵命を誘拐するために、ワザワザ教室までご足労して来た陸刀家のヒットマン三人も、ターゲットである命本人のために、太郎、皇金の二人が倒れ、後はサラメロウだけとなった。

 赤い髪の小男、太郎は、腰が完璧に破壊されていて何時死んでもおかしくない状態。

 そして今、命によって倒された皇金のダメージも太郎に劣っておらず、見た目で分かるだけでも、右側の顔の陥没。 さらに顎が”ズレて”真横を向いていた。

 その上、命の肘付きは、皇金の内臓を壊している。 歪んだ口から溢れる血液がその証拠だ。

 太郎と皇金、この二人の様子を改めて眺めた後、サラメロウは「ふぅ」とため息をついた。

「私が、雪之絵 命を倒したとして、太郎と皇金さらに雪之絵 命の三人を担いで帰るのは無理よね。」

 太郎と皇金は、自分達の足で帰れるほどの甘いダメージではない。 かと言って、このままほったらかしにして雪之絵命だけを連れ帰る訳にも行かない。

 サラの力が弱いわけではなく、腕二本で三人を担いで帰るのは無理と言う事だ。

「つまり、今回の任務は完全に失敗...」

 ”ただ女の子一人を連れ帰るだけ”そう安易に考えていた事を後悔しながら、正面に立つ雪之絵 命を見つめる。

 サラメロウにしてみれば、もう命と戦う理由は無い。

 このまま、「はい、さよーなら」で終われれば、それにこした事はないのだが、さすがに命は許してくれそうもない。

「無駄だと思うけど、一応提案するわ。」

「ここは、私達の負け。 それ認めるから大人しく逃がしてくれない? 私、もうミコトと戦う意味ないのよ。」

「...別にいいよ?」

「私は、この二人殺せればそれでオッケーなのよ。 アンタだけ帰れば?」

 命は言いながら、完全に意識の飛んでいる皇金の首根っこを右手で掴む。 そして皇金の巨体を、小石でも放る様に壁に向かって投げつけた。

 女の細腕とは思えない力だ。

 壁に凭れる形を無理矢理させられた皇金は、陥没した顔面とスライドした顎を晒した。 それを目の当たりにした、クラスメートが小さく悲鳴を上げる。

 太郎と皇金のダメージを見る限り、高森、タケ子、カズ子の三人が受けた傷など比べるべくもない物だ。 どれだけ命が容赦なかったかが分かる。

 しかし、命はカズ子の足を折ったのがサラメロウだとは思っていないらしい。 命がサラを相手にしないのは、その為だろう。

 皇金を睨み付けた命が、そのまま壁に凭れた皇金に歩みを進める。 長身の皇金が腰掛ける形は、命からすれば絶好の的である。皇金の崩れかけた顔面に、思うがままに攻撃出来る。

 もはや、息の根を止める儀式でしかない。

 本来なら躊躇するであろう場面。 しかし今の命には一辺の迷いもなく、脚力全開で皇金に向かって飛び込んだ。

「一人で帰れるんなら、そうするんだけどね。」

「そうも行かないのよ。」


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