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タケ子がスカートのホックを付けていた時、その大音響を聞いた。
今のが、人間が人間に攻撃されて響いた音とは、観ていなかったのなら考えもしないだろう。
後ろには、自分を辱めていた侵入者がいるはずだ。 先ほどまでの恐怖を思い出し、足が震える。
しかし、後ろから伸びてタケ子の首に回されたのは、暖かくて柔らかく、そして優しい女の子の両腕だった。
タケ子の耳元に口をよせ、囁くように、それでもはっきり聞こえる言葉で、命が伝える。
「タケ子が傷ついているの、分かるの。 よく分かるの。 でもお願い、私に力貸して。
高森を病院まで連れて行ってあげて。 カズ子もね、足折られて動けないの。 病院に連れて行ってあげて。
私ね、タケ子にしか、お願いできないの。」
命に言われるまでもなく、元よりタケ子はそのつもりだった。
しかし、この命の言葉を耳元で聞きながら、タケ子は自分の体の異変に気が付き、絶句した。
タケ子は、男の子が好きな健全な女である。 それが証拠に高森 夕矢に対する想いが『憧れ』から『恋』に変わって久しい。
しかし、今、命の囁きを聞きながら、タケ子は股間から熱いモノが滲んでいる事をはっきりと意識していた。
太郎にさんざんいじられても、何も感じなかったというのに。
タケ子は、間違いなく健全な女である。 それなのに、今の命は、タケ子を狂わせていた。
このまま、抱かれ続けたいという思いと、これ以上は危険という相反する感情が争う中、タケ子のもっともな疑問が頭を過ぎる。
「私も、用件片づけたら、すぐに病院駆けつけるからね。」
用件、て?
タケ子が夢見ごこちで、それを聞こうとした時、命が更にタケ子の耳元に口を近づけた。
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タケ子への口調と、こちらを見つめる視線の、あまりの違いを目の当たりにして、サラメロウは、思うしかなかった。
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命の力 その二、終わり。