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雪之絵真紀との再会。
京次は、ふに落ちない事柄が幾つかあった。
『暴力でしか、好きな人の心に残れない私の気持ちが、あなたに解ると言うの?』
そう言った雪之絵だったが、元はといえば、暴力で京次の心に残ろうとしたのは、雪之絵真紀自身である。
命という娘がいるとはいえ、同様に貴時という子供のいる詩女と離婚するなど、京次の性格から考えてありえない。 京次をよく知る雪之絵は、暴力でしか京次との絆を維持出来ない事を、百も承知だったはずだ。
それが、あの時雪之絵は、その唯一残されていた絆を、自分から切って見せた。
。
二つ目は、これ。
『呪いの件は、私に任せてくれない?』
そう言った後、呪いの話を誤魔化そうとしていた雪之絵。
そんな様子を見れば、雪之絵が何かを知っているのは間違いないと、誰でも思うだろう。
。
最後に、一番不可解だった事、
何故雪之絵真紀は、命に会おうとしないのだろうか。
いや、そもそも、自分が無事に生きている事を、命に伝える事すらしないのは何故なのだろう。
これら不可解に思った事を総合すれば、おのずと見えてくる。
そもそも雪之絵真紀に取って、一番辛い事とはなんなのだろう。
爆弾の処理をする事?
産まれて初めて得た、無条件で愛情を注げる相手である娘の命と、離れ離れでいなければならない現実、ただそれだけだ。
だから、確固たる自分の意志で、命に会うまいと決めた雪之絵が、少しでも命の近くにいたいと思って借りた、隣の部屋。
その意味を、京次は本当の意味で理解していなかった。
思いの他、雪之絵が命の側で暮らしていると知って、安心してしまった。
「...それで?自称真紀の母さんよ。 今日、俺の前に現れたのは何故なんだい?」
「命が黒い瞳になるのは時間の問題。 キッカケさえあれば、今直ぐにでもなるでしょう。 真紀は、何の躊躇もなく命に殺されるはずです。」
「......」
「過去、黒い瞳から元に戻った雪之絵の娘は、親殺しの業に堪え切れないずに発狂しました。 ですから京次さん、あなたに傷ついた命を支えてあげて欲しいのです。」
「......」
「お願い出来ますか?」
「お断りだね。」