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屑男 撲滅委員会!

−ブラック・アイズ−

 雪之絵真紀との再会。

 京次は、ふに落ちない事柄が幾つかあった。

『暴力でしか、好きな人の心に残れない私の気持ちが、あなたに解ると言うの?』

 そう言った雪之絵だったが、元はといえば、暴力で京次の心に残ろうとしたのは、雪之絵真紀自身である。

 命という娘がいるとはいえ、同様に貴時という子供のいる詩女と離婚するなど、京次の性格から考えてありえない。 京次をよく知る雪之絵は、暴力でしか京次との絆を維持出来ない事を、百も承知だったはずだ。

 それが、あの時雪之絵は、その唯一残されていた絆を、自分から切って見せた。

 二つ目は、これ。

呪いの件は、私に任せてくれない?』

 そう言った後、呪いの話を誤魔化そうとしていた雪之絵。

 そんな様子を見れば、雪之絵が何かを知っているのは間違いないと、誰でも思うだろう。

 最後に、一番不可解だった事、

『この部屋、私の部屋だから。』

 何故雪之絵真紀は、命に会おうとしないのだろうか。

 いや、そもそも、自分が無事に生きている事を、命に伝える事すらしないのは何故なのだろう。

 これら不可解に思った事を総合すれば、おのずと見えてくる。

 雪之絵真紀は、黒い瞳になった命に自分が殺されれば、呪いが解け、命も元に戻る事を知っているのだと。

 そもそも雪之絵真紀に取って、一番辛い事とはなんなのだろう。

 陸刀の差し向けたヒットマンと死闘を演じる事?

 爆弾の処理をする事?

 寝る間も惜しんで、命を守る事?

 全てが否だ。 雪之絵ならば、これら全て『どうと言う事も無い。』

 雪之絵真紀が、唯一無二で辛いと思う事は、ただ一つ。

 産まれて初めて得た、無条件で愛情を注げる相手である娘の命と、離れ離れでいなければならない現実、ただそれだけだ。

 『この部屋、私の部屋だから。』

 今より命が自分を好きになったら、その後辛い思いをするのは、命自身。

 だから、確固たる自分の意志で、命に会うまいと決めた雪之絵が、少しでも命の近くにいたいと思って借りた、隣の部屋。

 その意味を、京次は本当の意味で理解していなかった。

 思いの他、雪之絵が命の側で暮らしていると知って、安心してしまった。

 それに、どんな意味があるのか考えもせずに。

「...それで?自称真紀の母さんよ。 今日、俺の前に現れたのは何故なんだい?」

「命が黒い瞳になるのは時間の問題。 キッカケさえあれば、今直ぐにでもなるでしょう。 真紀は、何の躊躇もなく命に殺されるはずです。」

「......」

「過去、黒い瞳から元に戻った雪之絵の娘は、親殺しの業に堪え切れないずに発狂しました。 ですから京次さん、あなたに傷ついた命を支えてあげて欲しいのです。」

「......」

「お願い出来ますか?」

「お断りだね。」


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