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屑男 撲滅委員会!

−ブラック・アイズ−

 雪之絵真紀とエデン母。 格闘技を知る者から見れば、まるでデタラメな攻防が続く。

 猫の様にしなやかな動きで、人の骨格を無視した攻撃を繰り出す『エデン母』。 マニキュアとペディキュアの毒がなければ恐くないと思われるかも知れないが、柔らかい間接は、全ての攻撃に捻りを加えていた。

 かつて、『コークスクリューキック』と名付けた、雪之絵命の後ろ回し蹴りを、遥かに凌駕する回転数。 命がスクリューなら、エデン母のはドリルだ。

 一方の雪之絵真紀も、変幻自在のエデン母の攻撃を躱す為、足を地に付ける事すらままならずにいるが、攻撃力なら負けてはいない。

 体勢の崩れたままでの攻撃は、腰の入っていない、いわゆる『手撃ち』と言われる攻撃に見えるが、その実、重力にまかせ、常に自分の全体重をかけている。

 地面の力を借りる。

 日本武道で言う、『倒木法』。 まったくの我流である雪之絵が、実戦で自ら培った攻撃方法である。

 そして、元々得意だった。遠心力を利用する身のこなしも健在。 雪之絵の攻撃を頭部に食らえば、頭蓋骨陥没は免れない所だ。

 だが、総合力では、薄笑いの余裕を見せるエデン母の方が一枚も二枚も上手である事実は覆らない。

 四匹の毒蛇とも言うべき、どこに潜んでいるか解らない両手足。 自在に動き、容易く後ろに回り込む、蠍の尻尾を思わせる弁髪。 これらを躱す為に、雪之絵は神経も体力も、急激な速度ですり減らして行くのだ。

 カンにさわる筈のエデン母の薄笑いも、今の雪之絵に構っている暇はなかった。

「おのれ...」

 今、狙われている筈の命と、毒に冒された京次が、雪之絵の焦りをさそう。

 しかしエデン母は、途中から自分の攻撃を止め、雪之絵の攻撃を防ぐ事に専念し始めた。 今だ消えない薄笑いを見ても、雪之絵の攻撃に押された訳では無いと解る。

 雪之絵はそれを、『自分を、命の元へ行かせない為の時間稼ぎ。』と考えた。

「おのれっ!!」

「その考え...甘いなぁ。」

!?

「はーい、 タイムオーバー」


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