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家族第一主義。
『エデン』の育った某大国は、それこそが最大の美徳とされており、その国で創られる映画のテーマに『家族』がやたらと使われるのも、そんなお国柄のなせる業である。
しかし、それでありながらプライバシー保護には厳しく。 子供は生まれた時から、両親とは別の部屋で寝る事になる。
子供の頃、当たり前のように両親と同じ部屋、同じ布団で寝たりもする日本とは、随分対照的だ。
どちらが正しいのかは、文化の違いなので一概に言いにくいが、某大国の子供達が、凶悪な非行に走りやすい理由の一つとして、親子の寝室の別離が言われているのは確かであった。
双子の娘、エデンマルキーニも、親子の寝室別離には反対で、事あるごとに両親の寝室へ忍び込んでいた。
『もしかしたら、またエッチな事をしてるかも知れない。』そう思って、物音立てずに這って来たが、残念な事に『エデンの母親』は部屋の角にある鏡の前で、念入りな化粧の真っ最中だった。
「お母さん? 何してんのー?」
落胆をあらわにして、エデンマルキーニが立ち上がる。 エッチをしていないのなら隠れる理由などない。
「んー? ちょっと今からお仕事。」
鏡ごしにマルキーニを見ながら、化粧をする手は止めずに、『エデンの母親』が答える。
「そーなの? こんな夜更けに?」
「やだ。 まだ夕方よ? あなたが昨日から寝っぱなしだったから、時間の感覚がズレてるのよ。」
エデンマルキーニは、昨日、カズ子と一緒に遊んだ。
本人は気付いてないが、屍を操るのは相当な体力を消耗する。 昨日から寝っぱなしだったのは、その為だ。
「なんだあ...でも、お仕事なら私もついて行こうか?」
『エデン』の仕事といえば、殺しに他ならないが、エデンマルキーニはそれを、お友達を増やす行為としか思っていない。
過去にもそのお友達、つまり屍を連れて、殺しに参加した事が幾度となくあった。
「今日はいいわ。 あなた疲れてるんでしょう? それに鳳仙家が雇ったヒットマンが手伝ってくれるから。」
化粧を終えた母親が、エデンマルキーニの頭をなでる。