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屑男 撲滅委員会!

−ブラック・アイズ−

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「それでは、賭けをしようか。」

 今にも飛び掛かろうと身構える高森と、タケ子の胸を弄り回す太郎を割って入るように、長身の侵入者、皇金が歩みを進める。

 そして、高森とカズ子の視界の中に入ると、おもむろにカズ子を指差した。

「キミが責任持って、雪之絵 命を探し、この場所に連れて来るんだ。」

 続いて、カズ子を差していた指を高森にズラす。

「制限時間は、この高森君が、俺にノックアウトされるまでの間。」

「!!」

「で、間に合わなかったら...」 皇金は最後にタケ子を指差して見せた。

この場で、輪姦(まわす)と言う意味だ。

「......」

「高森君....」

「カズ子さん、すみませんが、命さん連れて来てもらえませんか?」

 皇金を睨み付けて放さない高森の言葉に、カズ子は耳を疑った。

「でも...」 

 カズ子の言わんとしたい事は、高森も分かっている。 いや、それ以上に理解しているつもりだった。

 高森は、尊敬する皆月 京次が、必死になって強くなろうとしている理由が不明だった。

 しかし、今ならば分かる。 皆月京次は、こいつ等から 命を守ために、死にもの狂いの修行を続けているのだ。

「聞いて下さい。 この男(皇金の事)は、たとえ刺し違いになっても、僕が倒します。 ですが、そうなると...」

 高森は、視線をサラ メロウとタケ子を押さえる太郎に、それぞれ視線を送る。

「あと二人、僕一人で押さえる事は出来ません。 ここは命さんの力が必要です。 お願いします。」

 ずいっと、皇金に向けて足を踏み出す。

 高森は、直感ではなく経験から、この侵入者(皇金)の強さのレベルを計り知っていた。

 侵入者三人の中で、一番強いのは、この男(皇金)。 その強さは、高森の師匠である皆月京次にも匹敵するかも知れない。

 本来なら絶対に勝てないであろう相手。 しかし、相打ちでもいいから、この男さえなんとかすれば、後の二人なら命一人でも捌けるはずだ。

「わ、分かった。 すぐに連れて来るから待ってて。」

 既に臨戦態勢に入っている高森の後ろから、一声掛けてカズ子は走り出した。

 命は、中庭で眠りこけているはず。

 この教室から中庭までは、走れば一分と掛らない。

 ...え?

バキッ

どさっ、

「何やってんの?早くしないと間に合わないよ?」

  カッ、

「いいのかい?」 視線をサラに動かした皇金が問い掛ける。 当然二人ともカズ子が鳳仙家の一人と知っている。

「いいのよ。」 ふん、と鼻を鳴らして言い放つ。

 サラに限らず、陸刀に飼われているヒットマン達は、呪術などと言う如何わしい力で自分達の上に立つ、鳳仙家の人間を嫌っていた。

 やれやれ、とため息をついて見せた皇金が、目の前で俯いている高森にあらためて向き直る。 

「さて、それじゃ始めるかい?」

「...僕は、今日ほど空手をやっていてよかったと思った日はありませんよ。」

「そうかい。」


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