クレイモア

屑男 撲滅抹殺委員会!

−前へ歩く−

「!」

「流石は雪之絵の血だな、アクロバットな戦い方しやがる。俺には無理だぜ。」

 京次は、そう言いながらのそりと立ち上がった。 無論、視線で『黒い瞳』を牽制しながらだ。

「ダメージ無いのか?」

「ああ、こうやって、自分で床をぶち抜いたからな。 だから、蹴りの威力は届かなかった感じだ。」

 後ろからの貴時の問い掛けに、そう答えながら右拳でアッパーをして見せる。 そのアッパーの軌道は、上では無く、自分の後ろに向けられていた。

「......」

『でも、床をぶち抜くのがもう少し遅れたら、俺の頭は踏み潰されていたな。』

 不安にさせまいとこれは言葉にしなかったが、貴時も楽観はしていない。

 結果こそ互角の攻防だったが、内容は『黒い瞳』が京次を圧倒しているように見えた。

 更に、相手が雪之絵命である以上、京次は攻撃を当てられる個所が限られ、力もセーブしなければならないハンデがある。

 どう考えても、有利な状況が思い当たらない。

 苦渋の表情の貴時がそう結論を出した時、当の京次からは、思いがけない言葉が発せられた。

「だが、これは何とかなるかも知れねーな。」

「!?本当か!?」

「ああ、今ので解った。」

「命には意識がある。」

0

「そうなのか!?」

「ああ、悪霊が命の体をラジコンみたく動かした所で、あんな動きはさせられねーよ。 つまり、あの動きは命が自分の意志で行ったのさ。」

 先ほどの攻防で体感した、『黒い瞳』の力と速度と体術。

 人間離れした力と速度は悪霊が作用しているのであろうが、体術は『雪之絵真紀』と同じものであると、京次は誓って言えた。

「...命姉さんが自分の意志で悪霊に荷担しているって言うのか?」

「いや違う。 幻覚を見せられているのか、幻聴を聴かされているのか、...兎に角、悪霊に騙されてる感じだな。」

「しかし、これで光明が見えた。意識があるなら意識を失わせれば良い。」

「命を気絶させてしまえば、『黒い瞳』は、ただの怪力馬鹿だ。 どーって事はねえ。」

「...気絶させられるか?」

貴時の、この危惧も当然。

 光明が見えたとは言っても、相手は『黒い瞳』である。

「...貴時。 ケタ外れの化け物と、どうしても戦わなければならない場合、有効な戦い方は二つ。」

「一つは、正攻法。」



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