『ギエエエッ!!』
悪霊は、霧状に体を変化させて京次から逃れた。
実体化するのを止めた悪霊を、京次には攻撃する術は無いが、それは悪霊とて同じ事で、そのまま悪霊は『黒い瞳』の本体へ逃げ帰った。
一瞬、追いかけようとする仕種を見せた京次だったが、直ぐに思い直して足を止めた。
三体の悪霊達が、ゆっくりと『黒い瞳』の本体、すなわち雪之絵命の体の中へと入っていく。
京次が追わなかったのは、正しい判断だったと言わさせるおえない。
辛うじて気配が読める程度の貴時でさえ解る。 悪霊達が本体に入るほどに、雪之絵命の体から発散される波動が大きくなっていくのだ。
「...親父。 俺がワザワザ言うまでも無いだろうが、今の黒い瞳は今までより遥かに強いぜ?」
京次は、改めて娘の命の姿を見やり、気持ちが萎えそうになるのを、無理矢理奮い立たせた。
命が元に戻り、悪霊を駆逐できるなら、自分が犠牲になるのも厭わない。
そう考えて、エデン母からの情報もあり、雪之絵真紀よりも若干早くこの場所に辿り着けたが、貴時が居たのが大誤算だった。
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「親父?」
時間は少ししかない。
「まあ、任せろ。」
京次はそう答えると、珍しく両手を持ち上げ、はなはだ独創的な形ながら”構え”を取った。
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の
最終話 (その二十) 終、