クレイモア

屑男 撲滅抹殺委員会!

−前へ歩く−

ぶん

ドンッ

「お、親父!?」

 貴時の呼び声に、皆月京次はひょうひょうとした表情を見せながら、肩越しに視線を送った。

「貴時...まさか屋敷の中まで来てるとは思わなかったぞ。」

 そんな、この場にそぐわない様子が、逆に安心感を与える。 おかげで余裕を取り戻した貴時が、膝を折ったままながら急いで体勢を整えた。

 肩膝を立てて、何にでも対処できる体勢。 本当は立ち上がりたい所だが、子供の体力しか無い貴時は、それすらも辛い状態だった。

「だが、丁度良かった。あのな、詩女とお前の事なんだが...」

「何だ? 母さんと俺から距離を置いた言い訳を、こんな時にするつもりか?」

 本当に、この場にそぐわない話。 貴時はイラつきながら京次の言葉を遮った。

「そんな事はどうでも良いから、兎に角、命姉さんを助けろ!」

「...」

 貴時は、京次を許さない。

 だがそれは、貴時自身が寂しいからでは無く、母親の詩女が寂しそうにしているからだ。

 京次が、詩女や貴時から距離をおき続けたのには理由がある。 詩女や貴時が、雪之絵命を狙う『敵』の標的にされるのを恐れたから。

 幸い、敵は京次を軽視していた。 だから、距離を置くだけで、詩女や貴時に害が及ぶ事は無いと考えた。

 そして実際、詩女と貴時に利用価値が無いと踏んだ敵は、二人に接触することは無かった。

 実は、貴時はそれは充分に理解していた。

 だが、それでも貴時は京次を許さない。

 詩女は理解のある女だ。 元より冷たい女でも無い。 

 雪之絵命を優先させる理由、詩女や自分から距離をおく事情はあるにせよ。

何故京次は、その理由と事情を、詩女に説明しなかったのか。

 『詩女に心配かけたくなくて黙っていた。』 京次はそう答えるだろうが、どのみち貴時に納得できる答えでは無かった。

「...ふぅ、」

 思わず京次はため息をつく。 しかし、なんとなく納得してしまった。

 母親の詩女と姉の命。 貴時は、この両方を本当に大切に想ってくれている。 それ以上を望のは、贅沢な気がした。

『兎に角、命姉さんを助けろ』

0

「任せろ。」


ニィ


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