冷めた目で京次を見ながら、雀将は両手をゆっくり持ち上て、得意の構えを取る。
拳を握り込まない肩の力を抜いた構えは、雀将がスピード重視の戦闘スタイルである事を示している。
それに比べて京次は、既に敵が目前まで迫っているというのに、未だ両手をぶら下げたまま、構えらしきものを取ろうとしない。
「ん?」
不信に思った雀将が、京次を注意深く眺めていると、ある事に気が付く。 コートの長い袖に隠れて分かり難かったが、左の手に包帯が巻かれているのだ。
包帯から突き出るように伸びた指は、血行が悪く、白く変色していた。
雀将の表情が、幾分曇る。 京次の左手の怪我が、骨と筋の両方を傷めたものだと一目で理解できた。