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クレイモア

屑男 撲滅抹殺委員会!

−前へ歩く−

「義手を外してくれて、アリガト。」

 光沢のある粒子が、外れた義手の中から吹き出し、闇夜を白く染め上げて行く。

 一瞬、毒ガスかと恐れをなした加渓が飛び退いたが、フラリと立ち上がったサラの様子を見るに、そんな危険なものでは無いと解った。

 『煙幕...!』

 鳳仙圭が、歯ぎしりしながらうめいた。 お世辞にも視界良好とは言えない水晶は、既にサラの姿を捕らえてはいなかった。

 サラは鳳仙圭の存在など知る由も無いのだが、幾つかある遠隔操作の弱点の一つが、ここで明るみに出たのである。

「一発の破壊力は、誰にも負けない自信があったんだけど...恐れ入ったわ。 でも、お頭は、私の方がお利口さんだったみたいね?」

『くっ!!』

「さて、私は視界ゼロでも、気配でアンタ達の居場所が解るわ。アンタ達には、私の居場所解る?」

 辛うじて見えていたサラは、この後、姿も気配も完全に煙幕の中に溶け込んだ。

 元々、気配を読むなどという高等技術が出来るはずもない鳳仙圭だが、今、まったく別の場所にいるのだから尚更である。 また、操られているだけの桐子や加渓は論外だ。

 水晶の向こうにいる鳳仙圭は、何時もの余裕を無くし、悔しさに体を震わせた。

 思考は認めていないが、気持ちは認めている。 鳳仙圭は、欠陥品と馬鹿にしたサラメロウに、得意の頭脳戦で完全に上を行かれたのだ。

『桐子!音を探れ!!金属製の義足なら、アスファルトを歩く時、必ず金属音が聞こえるはずだ!!』

 この状況では、もはやそれ一つしかない命令を下す。

 桐子はヘタに動かず、その場で身の回りを警戒しながら、加渓とともに耳を澄ませた。

 白い煙幕の噴出は、もう止まっている。 時間と共に、煙幕も風に流され視界も戻って行くはずだ。

 それまでの間、サラの接近を許さなければ良い。


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