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屑男 撲滅委員会!

−ブラック・アイズ−

 思い出の道で、雪之絵真紀と再会を果たした皆月京次は、小高い丘にある林の中に場所を移した。

 と言っても、この場所を知っていたのは雪之絵の方で、京次はお土産を買う為に寄り道させてもらった以外は、後ろを黙って歩ていただけだ。

 しかし、雪之絵がこの場所に案内した理由は、京次にもすぐに解った。

 木にもたれて座り込む京次が左側に視線を向けと、そこは町が一望出来る崖になっており、その景色の中心に、京次と命の住むアパートがる。

 加えてこの丘は林になっているので、自分の身を隠しながらアパートを見張れる、便利な場所なのだ。

 きっと雪之絵真紀は、この様な場所を沢山知っていて、その場所を転々としながら命を見守って来たのだろう。

 命の身に何かあった時、何時でも助けられるように。

 ふと、一抹の寂しさを感じた京次は、それを振り払うかの様に雪之絵に話し掛ける。

「色々話したい事はあるんだが、やはり何をおいても、命の事だよな。」

「そうね。 京次は、どの辺りまで知ってるのかしら?」

「そうだな...鳳仙と、陸刀と、雪之絵の連中に命が狙われている事ぐらいか?」

 それを聞いて、雪之絵真紀は口の中で「まあ、充分かしらね。」と呟いた。

「 でも、当然お前の方が、もっと詳しく知ってるんだろう?」

「勿論、知っているわ。」

「アパートに陸刀の殺し屋を囲っている事。 命が襲われてる時アケミとホテル行ってた事。 あまつさえ命とキスした事。」

「この腐れ外道が!」

「俺、そんな理由で戦いたくないなあ。」

 平静を装いつつも、全部バレてる事に心底ビビリながら、脱線してしまった話を修正しようと試みる。

「まあ待て、それより命の呪いの話は本当なのか?」

 呪いという単語を聞いたと同時に、雪之絵の表情が一変した。 動揺を隠す為の無表情。 隠し切れない瞳の鋭さだけが元のままだ。

「よく知ってるわね。誰に聞いたの?」

「カズ子ちゃんだが、やっぱり本当なんだな?」

 ちっ、と雪之絵の小さな舌打ちが聞こえた。 どうやら、京次の耳に入れたい話ではなかったらしい。

「鳳仙のあの子供にね。 でもそれだと、呪いの現状に関しては知らないのよね?」

「呪いの現状?」 京次が思わず聞き直す。

「鳳仙の連中は、『本当の呪いの現状』は知らないはずよ?」

 そう言われて、かつて夢の中でカズ子に聞かされた話を思い出す。

 『百年以上前の話、雪之絵の女に封じ込められた呪いは、雪之絵の女が産む娘へ受け継がれる。』

 『娘を産んだ母親は、呪いの供物として捧げられ、産れ出た娘は、呪いを受け継ぐ女の子を産む。』

 『供物として捧げられるはずだった雪之絵真紀が生きているせいで、呪いの元となる悪霊が騒いでいる。』

「...まったく、ろくなもんじゃねぇな。」

 はき捨てるように呟いた京次。

 しかし、呪いの現状と言われれば、最後の『雪之絵真紀が生きているから...』の一文が当てはまる。

 カズ子の言葉を一つづつ思い出す、京次の思考を、雪之絵の落ち着いた声が遮った。

「呪いの件は、私に任せてくれない? 」

「おいおい、大丈夫なのか?ちゃんと説明してくれないと....お?」

「京次、堅い話はもういいわ。 久しぶりに会った事だし...ね?」

「お前! 呪いの話をごまかそうとしてるだろ!?」

 雪之絵が死ぬ事により、悪霊がしばらく大人しくなるのは知っている。 しかしそれでは根本的な解決にはならないはずだ。

 雪之絵に、それとは別の考えがあるのかも知れないが、一人で勝手な行動を取らせるのは危険な気がした。

 京次の最終的な目的は、雪之絵に命を返してやる事だ。 二人とも、絶対に死なせる訳には行かない。

「何よ。敵の陸刀アケミ相手に、堂々と人前でエッチしたくせに。 私とは何も出来ないというの?」

「そんな事、なんで知ってんだよ! お前、命じゃなく、俺を見張ってんのか!?」

「兎に角断る!!たとえ呪いの話がなくても俺は断ってる....」

ザァ

この時、二人のいる林の中に、あまりに不自然な風が吹いた。


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